野田秀樹について
○野田秀樹って誰。
1960年代に起きたアングラ演劇ブームの後、80年代から勃興した小劇場ブームで一躍有名になった俳優・劇作家・演出家。三谷幸喜
76年に劇団夢の遊眠社を設立、82年に解散。
92年に野田地図(NODA MAP)を設立。堤真一など著名な俳優を起用するように。
○野田作品の特徴
大きな特徴としてあげられるのは3つ。
- 素早い演劇
- 言葉遊び
- 詩に近いセリフ回し
1970~80年代の日本は“消費社会”と形容するにふさわしい社会状態でありました。そのような中で、散弾銃のように飛び交うセリフ、役者たちのダイナミックな動き、素人目で見ても「早い」と感じる野田作品は、時代にマッチしていると考えられます。
また、劇中ではわざとらしく韻を踏んだり、掛詞のごとく言葉を重ねあわせています。時折客席から笑い声が聞こえてきますね。
そして最も重要なのが詩に近いセリフ回し。野田の演劇観は「演劇は詩と肉体の交点から生まれる」たるもので、舞台上で躍動する肉体と共に、詩のようなセリフ回しが彼の根幹にあるのでしょう。
○作品紹介
今回は夢の遊眠社時代の作品、『ゼンダ城の虜』(1981)を取り上げて解説します。
ゼンダの森の「居留守の館」の門をへだてて、十三世紀と二十世紀の世紀末の物語が同時進行する。 門に入ろうとする赤頭巾少年。少年十字軍はなぜ消えたのか。城の中のフラビア姫は両性具有なのか。 皮膚呼吸をし、退化を始める少年たち。夢の遊眠社屈指の名作。
作中で行われるギミックとして挙げられるのが、13Cのフランス(マルセイユ)での少年十字軍と、現代の日本を行き来させている箇所です。この時空移動を説得づけるために舞台上で用意したのが、「デパートのエレベーター」と「デパートの屋上」の2つになります。
- デパートのエレベーター
→階ごとに違う世界を見せている。時空を移動する手段。 - デパートの屋上
→覗きからくりを使う赤頭巾少年。空想世界が“見える”ことで、現実と物語が双方向であることを示している。
また、この作品では「アダムとイブ」やキリスト教の考えや、人間の進化/退化という二項対立を用いて、神話・少年性・ロマンティズムを追い求めています。何というか、個人的にはゲームのRPGの物語などを想起させられます。
アングラ演劇は、起承転結がはっきりと存在しておらず、内容の説明や批評が困難である演劇を指します。夢の遊眠社時代の野田作品は「勢い」と「ロマンティズムの普遍性」を持ち、一度見ただけでは理解が難しいものだと感じます。れっきとしたアングラ演劇ではないでしょうか。
○NODA MAPでは
その後、NODA MAPという演劇ユニットを設立します。これ以後社会性の強い作品を作るようになりました。
『キル』(1994)ではチンギス・ハーンの世界征服と現代のファッション戦争を掛け合わせた作品を作り上げます。(斬る≒着る≒Kill)、(ファシズム≒ファッション)など、数々のダブルミーニングを探すことが出来ます。
その他にも『オイル』(2003)では中東の石油戦争を、『ザ・キャラクター』(2011)では新興宗教について。夢の遊眠社時代とは異なり、商業演劇に移って以後は非常に分かりやすく、かつインパクトのある作品を生み出し続けています。
○その他リンク
ありがたいことに、ニコニコ動画に相当数の野田作品がアップされています。
興味があればどうぞ。
http://www.nicovideo.jp/user/12624953/mylist(夢の遊眠社時代の作品)
*参考文献 扇田明彦 『日本の現代演劇』(1995) 岩波新書